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“らしく”をもっと

じゃない昔話3:恩は返さない!「新ツルの恩がえし」

昔話を新しく書き換えてみました。
どちらがいいという話ではなく、「価値観にとらわれなくていい」ということを感じてもらえるとうれしいです。
 

元のお話

ツルの恩がえし
むかしむかし、おじいさんが町に行った帰り道に、罠にはまっているツルを見つけ、助けてあげました。
その日の夜、外は大雪になり、道に迷った娘さんを家に泊めることになりました。
娘さんは、そのまま、おじいさんの家で一緒に暮らすことになります。
ある日、娘さんは、「絶対に覗いてはいけない」と言い、奥の部屋に入って機を織り始めました。娘さんの織った反物はとても綺麗です。その反物を売ることで、おじいさんたちは、裕福になっていきます。
どうしても、何をしているのかが気になったおじいさんとおばあさんは、奥の部屋を覗いてしまいます。
そこでは、綺麗なツルが、自分の羽をくちばしで抜いて、糸に混ぜんで、反物を織っていたのです。昔、おじいさんが助けたツルが恩返しにきたのです。「この姿を見られては、ここにはもういられません」と言い、山の方へ飛んでいってしまいましたとさ。

おしまい。

とってもいいお話ですね。

でも…

そこまでして、恩を返してもらわなくても…
と思う人がいてもいい。

そこで…
 

新:ツルの恩返し

むかしむかし、貧しいけれど、心の優しいおじいさんとおばあさんがいました。
 
ある日、おじいさんが町に行った帰り道のこと。
罠にかかってもがいていた一羽のツルを逃してやりました。

その日の夜、外は大雪になり、道に迷った娘さんを泊めることになりました。
娘さんは愛想がいいので、おじいさんともおばあさんとも打ち解けていきました。

あまりにもいい娘さんなので、おじいさんとおばあさんが、「こんなに素敵な娘さんが、ずっと家にいてくれたら幸せだねー」と話していたら、それを聞いた娘さんが「私は身寄りがないので、ぜひ、この家においてください!」と手をついて頼んできたのです。

そして、3人は一緒に暮らすことになりました。
 

そんなある日のこと

 
娘さんは、反物(着物の布)を編みたいから、糸を買ってきて欲しいとおじいさんに頼んできました。
娘さんが自分が欲しい物を言ってくるのは始めてのことです。
 
おじいさんが、町から糸を買って帰えると、娘さんは「これから反物を編みます。その間は、絶対に部屋を開けないでください」と言い残して、奥の部屋に入っていきました。
 
キコバタトン、キコバタトン。
 
娘が奥の部屋の入って三日がたちました。
 
おじいさんとおばあさんが心配をしていたら、なんとも綺麗な反物をもった娘さんが部屋から出てきました。
 
「これは、なんとも素晴らしい!」

娘さんが織った反物は、羽のように軽く、なんとも綺麗な色をしています。

「おじいさん、町で、この反物を売ってください。そして、新しい糸を買ってきてください」

早速、おじいさんが、町にいくと、お殿様が高いお金で買ってくれました。
家に帰り、買ってきた糸を渡すと、娘さんは、また奥の部屋に入っていきました。
 

気になったおじいさんは…

 
奥の部屋で何をしているのかが気になったおじいさんとおばあさんは、こっそりと部屋を覗いてみることにしたのです。
 
そっと、ふすまを開けると、そこに娘さんはいなくて、やせこけた一羽のツルが長いくちばしで自分の羽を抜いては、糸にはさんで反物を織っていたのです。
 
「あ!」思わず、おじいさんが声をあげてしまいました。
 
「この姿を見られたら、もう隠せませんね。私は、いつぞや、おじいさんに助けて頂いたツルです。助けていただいたご恩をお返ししたくて娘になってやってきました」

ツルは、全身の羽を引き抜いてしまったからか、すっかり痩せこけています。
  
 
 

見返りを期待して助けた訳じゃない!

普段は、物静かで穏やかなおじいさんなのですが、そのツルの話を聞いて、声をあげて怒ってしまいました。
 
「なんてことだ!もうやめなさい!そんな事をされても嬉しくない!」
 
「おじいさん、私は恩をお返ししたいのです」
 
「いや、恩は返さなくてもいい。私は、お礼を言われたくて助けた訳ではない。私はただ、自分が助けたいから助けただけなんだ。もし、あそこであなたを見放していたら、私はずっと気になって、夜も眠れなかったことだろう。私は私のために、あなたを助けたのだよ」
 
「いや、しかし…」
 
「しかもだ。あなたを苦しめてまで、私たちは裕福になりたいとは思わない。たしかに、貧しい生活だけど、何が大切かはよく分かっているつもりだ!」
 
「でも、何かをお返ししたかったのです」
 
「その気持ちは、とっても嬉しい。もし、私達のために、何かをしたいと思ってくれるなら、どうか、一緒に暮らしておくれ。そして、苦しんでいる姿ではなく、笑っている顔を見せておくれ。あなたが何かをしてくれるから、私達はあなたを愛している訳ではないんだよ。私たちは、あなたがあなただから愛しているんだよ」
 
その言葉を聞いて、ツルはボロボロと泣き始めました。
 
「そんな温かい言葉をかけてもらったのははじめてです。ありがとうございます。」
 
「どうか、他人のために、自分を犠牲にしようと思わないでおくれ。私達は、あなたが幸せでいることが何よりも嬉しいのだよ。ここで、あなたは好きなように生きたらいい。私達も、あなたのために自分が犠牲になろうとは思わない。私は私のしたいことをする。お互いに、自分の好きなことをしよう。そして、それが、お互いの幸せにつながるなら、こんなに幸せなことはない。私達夫婦は、そんな関係を築いてきたのだよ。その中に、あなたも入ってほしい」
 
「よくわかりました。愛してくださって本当にありがとうございます。私は、歌うことが大好きで、声がキレイだと褒めてもらうこともあります。今、この嬉しい気持ちを込めて歌うので、聞いてもらえますか?」と、ツルさんがキレイな声で歌いはじめました。
 
おじいさんも、おばあさんも、とっても幸せそうな顔で、その歌声に心を寄せ、幸せな一時を過ごしました。
 
それからも、3人は末永く幸せに暮らしましたとさ。
 
 
(おしまい)

 

ひとことメッセージ

 

誰かのために。
ありがとうと言われたい。
誰かの役にたちたい。
 
そんな気持ちになることもあります。
それは、とっても立派なことなのですが、大切な点があります。
 
それは、あなたが無理をしないこと。
もし、あなたが無理をしてまで、他人を喜ばせようとすると、それは長続きしません。
 
あなたは、どんどん疲弊してしまうのです。
そして、いつか、「こんなにやってあげたのに…」と見返りを期待することになるでしょう。
 
そうではなく、あなたが楽しくできることで、人を喜ばせるのです。
 
それであれば、あなたは疲弊することもありません。
あなたが、ただただ楽しいことをしていれば、周りの人が喜んでくれる。
こんな幸せなことはないですよね。
 
これを、もしかすると「天職」というのかもしれません。
 
ぜひ、時間をかけてでも育ててくださいね。
 

今日の質問:見返りを期待せずに、あなたができることは何ですか?

 
ぜひ、自分の答えを探してみてくださいね。

 
 

(文:河田真誠)
(絵:牛嶋浩美)

※この企画を本にして下さる出版社さんを探しています。河田真誠(info@cocoro-style.jp)まで連絡ください。



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